kiriban novel〜thanks1000hit

体が・・・言うことを聞かない。
こんなに体が痛くなるのは初めてだ。
この独特なにおい、雰囲気は・・・

首を動かし、見て分かった。

病院、らしい。
俺の右側にのベッドで、テリアが寝ている。
テリアも俺も相当な怪我を負っていたらしく、包帯だらけだ。
と、部屋のドアが開き、クラウザが入ってきた。

「目が覚めたみたいだね。大丈夫、かな?」

体を起こそうとしたが、痛みが邪魔をして出来なかった。

「・・・っ!・・・何でアンタがあそこに・・・?」

「ほら、安静にして。あそこは戦争から逃げるときに使われていたシェルターだったんだ。 “合言葉”みたいのが必要だったけど・・・」

俺は頷いて答える。

「君たちと同じ通り、あの森から下には降りられたんだけど、そこから先はその“合言葉”が分からなくて行けなかったんだ。 ・・・何で君たちがその“合言葉”を知っていたのか分からないんだけど」

・・・俺も、何で分かったんだろう。自分でも不思議に思う。

「じゃあ、あの魔獣は・・・」
「あれは万が一のために作られたものらしい。でも、あの魔獣のせいで製作者側に犠牲者が出たみたいなんだ」

そんなものを作ったのって・・・

「まさか、それ・・・」
「多分思っていることとは違うよ。それを作ったのは、『人間』」

『ディプリシティ』じゃなかったのか。
でも、そんなものを『人間』が作るなんて・・・

クラウザは空を眺め、笑顔で言った。

「生きているものは、自分にはないものを欲しがる」
「・・・・・・・」
「魔力はどの種族にもある。だから、飛ぼうとすれば空を飛べる。
しかし、『人間』には他の種族と違って翼がない。魔力がないと自分の力で空を飛べない。
・・・もしかしたら『人間』は、翼がないことに嫉妬してるのかもな」

そんなのが戦う理由だとしたら、笑いものだ。

「テリアは、今でも自分で空を飛びたいと思っているのか?」

クラウザが声をかけたほうを見れば、テリアが目を覚まし、空を見ていた。

「もちろん♪魔法で空を飛べるようになったけど、やっぱり翼で飛んでみたいな」

片翼だけど翼があり、何年も天空にいた俺にはよく分からない。
『人間』はそんなに翼が欲しいのだろうか・・・

「でもクラウザ様、あたしが昔言ったこと覚えてたんだ」



『どうして『人間』は戦うの?もしかして、翼がないから嫌なのかな・・・
あたし、戦うのは嫌だけど翼は欲しいな!自分の力でお空を飛ぶの!』

『そうだなー・・・『人間』に翼が生えるかどうかは分からないけど、空を飛ぶ日はきっと来るよ』



「あ、でも今なら、シャインに抱えて飛んでもらえば雰囲気は味わえるかもな」
「そっか。じゃ、今度飛んでもらおうかな〜」
「冗談はよしてくれ。片翼だけだから、俺だけだって飛びにくいのに・・・」
「いや、本気なんだけど」

・・・本当だ、目が笑ってない。
でも、『人間』が翼を憧れるのはちょっと分かる。
天使の翼は、本当に綺麗だから・・・

シャインとテリアが言い合いをしてる中、クラウザは一人、空を見つめ続けた。


「いつか来るよ。シャインが、自分の翼で空を飛べる日が・・・」


あとがき
ようやく完結しました・・・
どうだったでしょうか?
こんなんでいいのかな・・・かなり不安(汗)
どの場面でもいいから、翼関連の話を入れたかったんです。
続きを考えてて、「ここに入れるしかない!」と(笑)
では、最後まで読んでくださってありがとうございました!
inserted by FC2 system