寒さが身に染みる12月。
息をも凍りそうな今日この頃だが、雪が降る気配はない。
空には雲が一つもなく、ただ眩しいだけの太陽が一つある。
―ハァ・・・
濃い白い息が目も前を覆いつくし、消える。
こんなに寒いのだから雪降ればいいのに。
でも雪を見ると思い出してしまう。
あの日のことを。
その日も今日と同じクリスマスだった。
小さくてよく覚えていないけど、その日は雪が降っていたこと。
誰かが誰かを追っていたこと、お母さんがあたしを抱えながら走っていたこと。
そして気が付いたら、白い景色が紅い景色になっていたこと。
いくら白い雪が降っても、“紅”は“白”にならなくて。
その日からあたしの中で、クリスマスは悲しいだけの日となっていた。
楽しくなんか・・・ない日なのだと。
ダメ・・・笑って。
そうじゃないと悲しみだけのあたしに、からっぽになってしまう。
そんなのは・・・・
「テリアさん!」
急に名前を呼ばれ、夢から覚めたような感覚に襲われた。
「皆さん準備できましたよ。行きましょう」
弾むような声でかけてきたブリーズ。
その向こうには、たくさんの荷物を持ったシャインとフェイトが佇んでいる。
テリアと目が合うと、フェイトは片手を挙げて応える。
「うん、行こうか」
クリスマスは悲しみだけの日じゃない。
楽しいこと、嬉しいこと、いろいろが詰まった日でもあると、今日分かることが出来る。
その時、頬の冷たい感覚に気づきゆっくりと空を見上げる。
「ぁ・・・雪・・・・・・」
ホワイトクリスマスは、あの日以来。
同じ雪だけど、あの日とは違う感じがした。
今日も笑って。
それは悲しみを隠すためじゃなくて、クリスマスという日を楽しむために。
降りゆく雪は、そんな事をテリアに教えるかのように降り続ける。
今日の白い雪は、いつまでも“白”のまま―・・・