Trick or Treat

この小説はSOMの主要キャラクターですが、設定が違っていますのでご注意ください。

【シャイン・ハーツ】 男/混血児
  天使と魔族のハーフ。背中には片翼。
【テリアレデュリア・フリズム】 女/人間
  シャインの幼馴染。通称テリア。
【フェイト・ランバート】 男/人間
  シャインの友人。お祭り好き。
【ブリーズ・シャギア】 女/人間
  テリアの友人。家はケーキ屋。

*戦争はなく、種族同士の仲がいい。







―それは地上での出来事…


**


 『ハロウィンパーティー!?』


 テリアが住む家に集まった三人は、口をそろえておうむ返しをした。

「そ、去年もやったでしょ?それを今年もやるんだって。一週間後だけど、みんなで出ようよ」
「でも俺、去年パーティーに出てないし…。それに仮装しなきゃだろ?」

シャインはお祭りごとにさほど興味はない。
まして、ハロウィンなど、参加するものは全員何かの仮装をしなければならない。 
お祭りに行くのはいいが、その仮装をする、というのが彼は嫌なようだ。

「みんな仮装してるから恥ずかしいなんて思わないぜ。
 オレさ、去年は怪我してたから、さらに包帯を体に巻いてミイラ男で出たぜ」

フェイトは大のお祭り好き。
怪我をしていようがそんなことは関係なくお祭りに参加している。
去年のハロウィンの時は、右足骨折をしていた。
ミイラ男になったのは名案だが、本当に怪我をしているとはみんな思わず、右足を散々いじられ治るのが遅くなったというエピソードがある。
蛇足だが…。

「私はお店の手伝いをやっていて参加しませんでした。でも、ハロウィンだからって魔女の格好をしましたけど…」

 ブリーズの家はケーキ屋を経営している。
今年はお手伝いさんがたくさん来るということで、手伝わなくてもいいそうだ。

「で、テリアがハロウィンに出たいのはなんでだ?」
「実はねシャイン、今年は、素敵な演出をした人には金一封が出るっていう大会があるの♪グループ参加も可能だからみんなで出たいなって思って」
「金一封か…」
「フェイトさん、顔がにやけすぎ…。でもテリア、その演出って何か考えがあるの?」
「まぁね☆とりあえず、着る衣装を決めないとね」


**


「シャインはその片翼を生かして…こんな感じかな?テーマは“傷ついた天使”」
「おー、似合ってるぞ。いや待て、髪をこうワックスで動きを…よし!完璧だ!!」
「あっ、ここをもっとこう…」

それぞれの家から持ってきた服や飾りを使って、さっそく作業が始まった。

最初はシャインから。
今のシャインはまさに三人のおもちゃとなっている。
当のシャインは、もうどうにでもして下さい状態になり何も文句を言わない。
何とも諦めが早い。
と言っても、このメンバーでは何を言っても無駄なのだが。
なんだかんだ言いつつ、シャインから三人が離れる。
どうやら終わったようだ。

白と黒を中心にまとめられている。
黒の五分そでに、手には黒の皮製手袋。黒の長ズボンにブーツ。
“傷ついた天使”ということで、首や手足、とにかく体中に包帯が巻かれている。
背中には本物の羽があるということで、所々に羽をつけている。
ちなみにそれは作り物の羽。念のため。
装飾には十字架を使っていて、なかなか似合っている。

「これでオッケーだね」
「なんつーか・・・動きづらいな・・・」
「まぁ、あくまで衣装だからしょうがないだろ」
「と、いうことで、じゃあ次はフェイトね」
「どんなのがいいでしょうか?」
「そうだな…シャインが天使できたから、オレは魔族、とか」
「いいね、それでいこう!黒を中心に翼とマント…かな?」
「シャインさんが“傷ついた天使”なので、こっちも戦いましたって感じがいいと思うけど…」
「だな。腕とか足とか微妙に肌を出してみるか。シャインは何か意見あるか?」

三人のノリについていけなかったシャインは、いきなり声をかけられ少し戸惑う。

「え?……全身が黒を中心だから、銀とか赤を使った装飾品を使う…とか…」
「装飾品…何がいいでしょうか?」
「そうだ、鎖!銀色だし、体のいろんな所につけられていいかも!」
「鎖か〜いいな、それ。鎖は…あ、あった」

集まった服や装飾品、その他の素材の中から、大きさや形の違う鎖を引っ張り出す。

……誰が鎖なんて持ってきたのだろうか?

フェイトは試行錯誤しつつ鎖をいじくり、冷たい音を響かせる。


**


そして数分の後に仕上がった。

「完成…っと。どうだ、“戦った魔族”みたいに見えるか?」
「OK!本物の魔族…には仮装だから見えないけど、けっこういい感じだよ」

黒の半そでに長ズボン。
所々破れたり切れたりして肌が見えている。
手には指だけが出ている手袋。首や腰、手や足など体中には、大きさや長さが違う鎖が巻き付いている。
フェイトが凝ったところは後ろに長く垂れている鎖。
それを強調したくてマントは止めたようだ。
ドクロのアクセもついている。

「じゃ、次はブリーズか?」
「天使、魔族ときたから獣人族だね。耳と尻尾をつけよう!」
「耳と尻尾…とくれば服はメイドふ…」
『黙れ!!』
「ぐふっっ!!」

シャインとテリアのダブル攻撃がフェイトに炸裂した。

「その世界に入っちゃダメだからね。動物はそうだな…何がいいだろう?」

倒れたまま動かないフェイトを背に、残り二人の衣装を相談する。

「って思ったけど、ブリーズが獣人族で…テリアはどうするんだ?」

天使、魔族、獣人族、あとは人間と混血児がいるが、仮装をするにはテーマが難しい。
三人とも種族関係の衣装なので似たようなテーマにしたいのだが・・・

「そういえば…。あ!じゃあブリーズと2人で獣人族をやろうか!」
「そうだね!動物は猫とかは?ハロウィン→魔女→猫ってイメージだし」
「よし、それでいこう。じゃあ着替えてくるから待っててね」

山積みとなっている衣装や小物の中からいくつか選び、二人は隣の部屋へと入っていった。



――そして三十分経過――



「……長いな」
「女の身支度は長いもんだから」
「あ、生きてた」
「そんな言い方するなよ…。全く…少しは手が減してくれよ…。あー、体痛ぇ…」
「テーマが“戦った魔族”なんだからちょうどよかっただろ?」
「でもなー…」


―ガチャ―


と、部屋のドアが開き、仮装をした2人が戻ってきた。

「じゃーん!完成!」

二人とも頭にはネコ耳、後ろには長い尻尾が揺れている。


テリアは全体的に黒と赤を中心にまとめている。
スリットの入った黒のロングスカート。
赤のノースリーブと二の腕までの手袋。
また、あちこちにベルトを使い、スカートのスリット、ノースリーブと手袋をつなでいる。
他にもアクセントとして所々に使っている。
肩からは黒の小さなマントが揺れて、魔女のようにも見える。

ブリーズは黒とオレンジ色を身にまとっている。
フリルのついた黒のミニスカート。
オレンジ色のタートルネックの長そで。
膝までのロングブーツ。
また、オレンジ色のリボンを首や足、頭にも巻いている。
胸元には黒の大きなリボンが揺れている。

「おー、さすがに華があるなー」
「やーっと準備できたか…」
「それで、テリアが考えた演出って?」
「それはね…」


**


そして一週間後の夜。

町には魔法の光が溢れ、盛大なハロウィンパーティーが幕開けした。
人々は皆仮装をし、子どもはかごを持ち“トリック オア トリート!”と叫んでいる。
仮装の種類は実に様々。
定番な魔女はもちろんのこと、お化け類や天使、魔族、獣人族が多い。
その中には本物の天使やらもいると思うが…。
他にも、ピエロや何か物を表現している者がいる。
全て挙げたらキリがない。

テリアの言っていた“素敵な演出”をする所は、この町の広場。
その会場に集まった人が審査員となり、一番高得点の者が優勝、となる訳である。
シャイン達は二十組いる参加者の一番最後となった。
最初はもっと参加者がいたのだが、多すぎるので役員らが振るいにかけ少なくしたのだ。

「一番最後か…緊張するな…」
「大丈夫だよ。最後なら一番強く印象に残るし」
「でもうまくいくのか?」
「心配すんなって!シャイン、魔法は得意分野だし。あれだけ練習したから大丈夫だって」

そんな話をしている中、夜空に咲く大きな花火を合図に、とうとう大会が始まった。

参加者は皆、次々と考えた演出を披露していく。
用意した大量のカボチャを一瞬でパンプキンパイにする者。
魔法で花火を打ち上げ失敗する者。
当たりつきのお菓子を配り、当たりの人には商品を出す者。
中でも審査員達の目を引いたのは、魔法で空を飛び、空中舞踊をする者達。
メンバーは全員美男美女だからか、一番好評のようだ。


**


そしてとうとうシャイン達の出番となり、拍手が飛ぶステージへと躍り出た。

「それじゃ、手はず通りにね!」

舞台に出たシャイン達の手には大量のお菓子が入ったかご。
まずはシャインが何やら呪文を唱える。
準備が出来た、と目で合図を送り、みんな同時に頷く。

「いくよ!せーの!!」

テリアの掛け声と共に持っていたお菓子を一斉に宙に投げ、そこにシャインの魔法が放たれる。
シャインが放ったのは風の魔法。
お菓子が風に乗り、審査員の頭上へと運ばれる。
その間にテリアは呪文を唱え、フェイトとブリーズは風船を手に持つ。
テリアの呪文が完成し、再び合図を送る。
シャインは魔法をコントロールしてお菓子を下げ、
テリアは小さな明かりをいくつも放って光の雪を降らせ、幻想的な雰囲気をかもし出す。
この時、魔法の光がより綺麗にみえるように、会場のライトの光を弱くしてもらってある。

会場からは歓喜の声が溢れ、夜空から降ってきたお菓子を手にする。

しかしまだ終わりではない。
フェイトとブリーズは魔法がかかっている風船を投げた。
タイミングをみて、フェイトが指をパチン、と鳴らした。
その途端に風船は割れ、中からキラキラしたものがいくつも飛び散る。
魔法で作り出したものなので、ゆっくりと降り注ぎ、みんなの手元へと運ばれてくる。
すると突然、ポンッと小さな音を立て、あるいは花に、あるいはぬいぐるみ、あるいはお菓子へと姿を変えた。

「わー、可愛い!ハロウィンの格好をした猫のぬいぐるみだ!」
「私はちいさな花束!」
「チョコーーーvv」

それぞれの手元にいった物は一人一人違っている。様子を見ると、なかなか好評のようだ。

「やった!大成功かな?」
「けっこういい感じみたい!」
「準備するのに苦労したしな。成功してよかったよ?・・」
「優勝間違いなしだな!」

花にぬいぐるみにお菓子。
短い期間でよく集められたものだ。眠る時間などほとんどなかっただろう。
しかしみんな、やると決めたことは最後まで!という性格をしていたので、一生懸命やり遂げた。

そしてフェイトの言うとおり、テリアが考えた演出はとても好評で、見事優勝。
金一封を手に入れたのでした。




「最後に、定番のあのセリフを言いましょうか」
「オレらはあげた方なんだけどな」
「ま、決まり文句ってことで」
「だね。せーの…」


『トリック オア トリート!』



テリアが放った魔法の光が、夜空の星と共に輝き続け、幕は閉じられました。
その後、金一封を手に入れた彼らは、夜中までお菓子パーティーと称した宴会をしたのでした。

fin・・・


あとがき
この作品は、文化祭用に作ったものを微妙に修正したものです。
説明書きがあまりなくてすいません・・・
時間がなかった、と理由をさせていただきます(苦笑)
ところで、この小説を読んだそこのアナタ!
『トリック オア トリート!』
・・・意味分かりますよね?
待ってます(笑)
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