想イデ-7-twinkle and darkness 〜光と闇〜
辺りからはざわめきが消え、『無』になった。
体に闇が、力が溢れている。ソレが騒ぎたいと心に働きかけてくる。
そんな力を奥歯をかみしめ、必死に押さえ込む。
こんな所で・・・闇を・・・暴走させるわけには・・・!
「へぇ〜よく耐えてるね。『ディプリシティ』だから、かな?」
声からして男のようだ。
しかし、そんなことを気にして入られない。
そいつは闇を取り巻き、続ける。
「でも、それもここまで」
ドクッ・・・ン――!!
闇が体に広がっていく。
体を両足で支えられなくなり、片ひざをついてなんとか耐える。
「そうそう。僕がここに、君のところに来た理由を教えてあげないとね」
俺自身の意識が混濁するその中、そいつの声が頭に響く。
まるでからかっているような、そして明るい声。
「僕はね、君に手伝ってほしいんだよ。・・・再びS・G戦争を起こすために・・・」
どういうことだ・・・それは・・・
「僕は命令に従っているだけ。詳しいことは聞かされてなくてね」
何も言ってないのに、そいつは俺の心を読んだかのように続けて言った。
その俺の心では、小さな、しかしとても重要な戦いがあった。
[どうしてオマエは闇を開放しない?]
[その闇がどれほどのものか分からない]
[なら、今それを試すべきだろう?]
[ここじゃあ、皆に迷惑がかかる]
[なぜそんな心配をする?]
[ここが俺の居場所だから]
[オマエの場所はここではない。『ディプリシティ』なのだから]
[それは関係ない。皆は受け入れてくれた]
[偽りの世界かもしれない]
[そんな事はない!]
[なぜそう言いきれる?]
[それは・・・]
そこで急に、辺りからは『無』が消えざわめきが戻った。
「あれ、結界解けちゃった」
周りにはローブに身を包んだ者達が集まり、呪文を唱える。
男は臆する様子もなく、さらに続ける。
「まぁ後は闇がいるからいいか・・・な」
俺の周りの闇は、それに答えるかのようにざわめく。
その隙に魔族の足元に六芒星が描かれ、輝く。
「大人しくしろ!」
「・・・月並みなセリフだなぁ」
魔族はゆっくり左手を前方へと動かす。
「!!なにっ・・・!?」
六芒星に囲まれたら相当な力がないと動けるはずがない。
つまり、そいつはそれだけの力を持っている魔族だということだ。
動作は遅い、そしてヤツの顔は、笑っていた。
・・・っ!まずい!
「っ!逃げろ!」
「遅いよ」
闇になんとか耐えつつ叫ぶが、魔族は黒い矢のようなものを出現させ、ローブの集団に攻撃する!
うわあぁっっ!!!
いくつもの悲鳴が重なり、攻撃された者のほとんどは倒れ、瞬時に防御した者もダメージが大きかったのか息を荒くする。
術者の集中力が切れたせで、六芒星の輝きもなくなり、消える。
魔族に再び自由が戻り、黒い羽を大きく羽ばたかせた。
片ひざをつき、ヤツを見上げている俺の目には、空が漆黒に染まったかのように見えた。
「長居は無用・・・っと。じゃあ、またな・・・シャイン・ハーツ」
そう言い残すと高く跳びあがり、彼方へと飛んでいく。
少し送れ、何人かがそれを追いかける。
俺も追いかけたかったが、意識がだんだん薄れていってできなかった。
このままでは何をしてしまうか分からない。
魔族の近くにいると闇が反応し、制御するのが難しくなってしまう。
なんとか魔力を振り出し、魔族とは反対方向に飛び立つ。
「おい!?待て・・・っ!」
闇があるせいか、そのスピードは普通より速い。
追ってくるものと、どんどん距離が離れていく。
早くその場から離れたかったからよかったと言えばそうだが、“闇のおかげ”だと思うと素直に喜べない。
魔力を使ったせいか、すでに意識が危ない。
もう少し先に行ったら下に降りて気を静めないと・・・
俺は俺≠ナありたい。
自分を見失いたくない。
絶対に――
あとがき
とうとう闇が活動してくるようです。
シャインは半分は【魔族】だから、闇を受け入れやすくなっているんですよね。
闇の精霊とは【魔族】と一番相性がいいだけで、他の種族が使えないというわけではありません。
(悪の)害が全くない精霊もありますからね。
ですが、今回の闇はけっこうややこしいヤツなんです。
あの【魔族】と一緒にいたという事を考えれば、何となくわかるでしょうか・・・?
次回ですが・・・
ぜひ、お手元にハンカチの用意を。