あの日から、俺はエリエを意識するようになっていた。
いつもと変わらないはずのエリエがとても違って見えて。
いろんな事を知らないと思う自分がいる。
そして今日も、俺達は図書館にいる。
「エリエはさ、何で髪下ろさないの?」
「え?」
エリエはいつも髪を後ろで束ねていて、下ろしている姿を見たことがなかった。
「うーん、なんか邪魔になっちゃうし。炎系の魔法のときとか危ないしね」
「切ればいいのに」
「それはダメだよ!願掛けしてるんだから」
何を願っているのか聞くと、誰かに教えると叶わないからって教えてくれなかった。
「・・・じゃあさ、せめて髪を下ろしてみてよ」
いろんな君が見たいから。
「髪を?・・・あ、明日ね」
「何で?ただ下ろすだけなのに」
君の髪に触れたいから。
「まとめてると癖ついちゃって変なの!だから・・・明日、きれいにするから・・・」
その時のエリエの顔がおかしくて愛しくて。
また明日って約束した。
そしてこの時から、命のカウントダウンは始まっていた。
誰の命かは・・・まだ、誰も知らない。
この時は・・・。
この後は、前の時みたいにエリエを送って家に帰るだけだ。
ただ前と違うのは、空に太陽があること。
エリエと一緒にいる時間はとても短く感じる。
それを言うと「会おうとすればいつだって、明日だって会えるでしょ」と言われる。
そう、明日もあるから。
また、会えるから。